2011年12月 6日
こころつたえ第六回「大津・西教寺を訪ねる」
滋賀県大津市の坂本は、紅葉の名所としても知られています。日本の伝統文化を守り、日本人の美しい心を次世代に伝える第6回「こころつたえ」(ウェーブ産経主催)は、その坂本にある西教寺で11月23日に開催されました。
《紅葉の参道を通って》
坂本城の城門が移築されたという総門を入ると、参道の紅葉は赤や黄色に色づいていました。見事な紅葉を眺めながら参道を上がり、突き当たりの勅使門から右へ入った研修道場本館が今回の会場で、約100人の会員が集まりました。
西教寺は天台真盛宗の総本山。聖徳太子の創建とも伝えられていますが、室町時代に宗祖、真盛(しんせい)が再興し、不断念仏の道場としました。
《西教寺と真盛上人》
今回は同寺の西村冏紹(けいしょう)貫首が講師を務め、「西教寺と真盛上人」をテーマに講話。応仁の乱、文明の乱が続いた時代に、真盛は権力や欲を嫌い、仏の慈悲で国をおさめることに尽くしたことなどを説明しました。
その上で「私たちは自己中心になりがちですが、みんなで助け合って、ともに国をよくしていこうという気持ちがなくてはならない」「我を抑え、いかに人に喜ばれる行いにつなげていくことが大切」と訴えました。
《名物・食用菊の菊御膳料理》
坂本では古くから食用菊が栽培されており、昼食には郷土料理の「菊御膳料理」をいただきました。赤い器に盛られた料理は見た目も華やかで、献立は以下の通り。
菊酒(菊を1年間、焼酎に漬け込んだもの)、ごま豆腐の田楽、菊なます、菊の白あえ、菊のてんぷら、秋のかおり、菊ずし、菊のすまし汁、菊の一夜漬け、菊のゼリー
食前酒の菊酒には思わず、「うまい」の声もあがり、それぞれの料理には菊の香りがただよい、デザートのゼリーまで菊づくしを味わいました。
《本堂でお話も》
食後は2班に分かれて境内を見学しました。案内役は西教寺社会部主事で、塔頭・実成坊の住職、中島敬瑞さんらです。
まず入った「本堂」(重要文化財)は江戸時代の元文4(1739)年に落成した、総欅(けやき)入母屋造りの豪壮な建物です。用材は紀州徳川家から寄進されたとか。欅の1本造りの欄間に十六羅漢の彫刻が施されるなど、内部も豪華な仕様。内陣には本尊の阿弥陀如来像(重要文化財)がまつられています。
本堂では座って中島さんの話を聞きました。最初に説明してくれたのは、食事でも出された食用菊の「坂本菊」について。「坂本菊は花びらが筒状で32弁。最澄法師が中国から持ち帰って桓武天皇に見せ、『素晴らしい』と評価されて天皇家の家紋になった」そうです。そして「みなさんも天皇家の紋を食べました」と笑いを誘いました。
同寺が総本山となる天台真盛宗については「天台は密教が中心の延暦寺と三井寺、念仏中心の西教寺と3つに分かれる。それぞれ総本山だが、なぜか西教寺は一番知られていない」とユーモアを交えながらの解説です。
本堂でまつっている「真盛上人『身代わりの手白猿』」の像の由来も説明。室町時代の明応2(1493)年に坂本で一揆が起きた時、真盛上人が首謀者だと誤解した比叡山の僧兵が同寺に押し寄せたが、誰もおらず手白の猿が鉦を鳴らしていた。これを見た僧兵は日吉山王の使いの猿まで帰依していると感じ入り立ち去った、という伝承を紹介してくれました。
《名庭園も鑑賞》
本堂に次いで訪れたのは「客殿」(重要文化財)。元は豊臣秀吉の伏見城にあった殿舎を移したとされ、「桃山御殿」との別称もあります。こけら葺きの簡素な建物ですが、「鶴の間」「花鳥の間」などと名付けられた各部屋の襖や障子などには、狩野派による絵が描かれています。「賢人の間」の内仏は、京都・法勝寺伝来の薬師如来座像(重要文化財、秘仏)です。
この客殿に面しているのが、大名で建築家、作庭家としても知られる小堀遠州による庭園です。庭木や石灯籠、岩石などを複雑に配置しており、独自の個性が感じられます。境内には、この庭も含めて4つの日本庭園がありますが、残りの3つは地元の石垣職人集団「穴太(あのう)衆」によるものとか。小堀遠州の庭よりもシンプルな構成になっていますが、建物のしつらえと調和した美しさがあり、むしろこちらを好む人も多かったようでした。
このほか、屋根の上にはところどころに「身代わりの手白猿」にちなむ猿の瓦があり、見つける楽しさもありました。
◇
境内の見学を終えた後は再び研修道場に戻り、紅白の落雁をお茶請けに一服。サンケイミュージック所属の歌手、小川千春さんがさわやかな歌声を聴かせてくれました。
(2011年12月 6日 10:39)
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