産経新聞ファンクラブ「ウェーブ産経」大阪事務局

歴史のおもしろさを伝えたい 大阪城天守閣研究主幹 北川央さん(50)

 今年は、今の大阪城天守閣が復興されて80年。北川央さんは、年間140万近い入場者を迎える大阪城天守閣の学芸員として多忙な日々を送る。一人でも多くの人が歴史に関心を持つようとの強い思いの原点は、研究者としての葛藤の日々と少年時代にあった。(文・南本哲雄、写真・中里昭博)

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「広報マン」の思い

 「歴史が好きになる落とし穴をいろんなジャンルに掘りたい。一回はまったらその面白さから抜け出せへんような」。

 学者然としないわかりやすい話しぶりは、切れ味鋭く自説を展開して人気の講演会でもおなじみだ。大阪の歴史ウオークを立案したり、テレビ番組の歴史監修、さらに大阪城での文化イベントや真田幸村のミュージカル(OSK日本歌劇団)、大坂の陣の演劇(関西俳優協議会)を企画したりと、その縦横無尽の活動ぶりはさながら「大阪城の広報マン」。

 向上心、日々の努力、孤独、競争...。研究者が真理探究に切磋琢磨する姿をオリンピックのアスリートになぞらえる。一方で、学問の世界だけに閉じこもることに疑問や悩みを持ち、無力感を感じたことも。

 宅地開発で古墳が壊されていく現状を目の当たりにした経験から、歴史遺産の大切さを市民に理解してもらうことも歴史学者の大きな役目と悟った。

 「子供に勉強せえと言ってもしないでしょ。でもおもしろいと思ったらほっといても勝手に勉強する。それと一緒で歴史も一度興味をもってもらったら、それでもう大丈夫。だから、そのきっかけ作りをしたい」

 歴史の魅力に出会ったのは小学5年生。歴史の学習漫画本の口絵に載っていたお寺の建物と仏像の写真に引き付けられた。時空を超えて、先人たちの時代に飛び込んだような不思議な気分だった。すぐに祖父母にねだって法隆寺に連れて行ってもらった。これを皮切りに、一人でもあちこち歩きまわるようになり、ますます歴史のとりこに。

 「先祖が代々守ってきた財産を我々の世代が勝手な理屈で破壊してしまう訳にはいかない。現代にまで大切に伝えられてきた文化財の魅力、わが国の歴史の素晴らしさ、おもしろさを次世代に伝えたい。そのためには研究者としても最前線にいなければならない。、そうありたいと思っています」

 歴史好きだった少年が、ファンから研究者への脱皮に悩み、苦しみ抜いた結果が、今の活動につながる。学問の研究成果を市民に還元し、共有したい―。笑顔でその想いを熱く話した。

《プロフィル》きたがわ・ひろし
昭和36年、大阪生まれ。62年に大阪城天守閣学芸員となる。多くの大学、研究機関などで講師・研究員・委員を歴任。著書に「大阪城ふしぎ発見ウォーク」「神と旅する太夫さん」ほか多数。

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